⭐︎冷泉荘という時間  テトラグラフについて②

 

福岡市博多区の冷泉公園と中洲川端商店街にサンドウィッチされた場所に、築64年目(2022年現在)のリノベーションビル「冷泉荘」があります。この冷泉荘の屋根うら部屋に、アンティークな雰囲気を生かした自然光で撮影できるちいさな写真スタジオを作りました。

 

 

 

カチャンカチャンという、階段を踏むステップの音が聞こえてくると、「あ、誰かきたな」という合図。

訪問者は、斜めにカットされた外壁から、斜めに景色を見ながら、少し広い踊り場でくるんと体の向きを変え、階段を上ります。

それは、当時の人が見ていたであろう景色。たくさんの人が見てきたであろう日常。ここ冷泉荘は、関わる人たちを、紡がれてきた物語の中へと誘ってくれます。

 

 

戦後、焼けの原となった博多の地。

復興のさなか、集合住宅として登場した冷泉荘は、最先端という位置付けでその歴史をスタートさせました。それから数十年。老朽化がすすみ、空室が増え、一時はスラム寸前と言われるほど荒廃していきました。しかしその後、沢山の人の手によって復活を遂げるのです。

冷泉荘は、二度にわたる大規模な補修工事、耐震補強を経て、質感はそのままに、今現在リノベーションビルとして大切にされ、時を刻み続けています。

 

 

人が作ったものほど、時の経過を意識させられるのはなぜでしょうか。確かにそこに時間があった、ということを実感するのです。

真新しいピカピカの建物もいい。でも、ここでたまたま立ち止まった人たちに、ちょっとした旅のような、タイムマシンに乗ったような、そんな冷泉荘のもつ時間を味わって欲しいと思うのです。

 

 

たまに。

天気の良い日。玄関の外にイスを出して、そのイスに座り、コンクリートの踊り場から、階段の手摺り越しに外を眺めます。すぐ目の前の冷泉公園から聞こえる子供たちの声は思うより遠くて、周囲の建物に反射してどこから聞こえてくるのかわからなくなります。

雨の日は、中洲川端商店街のアーケードの天井を流れる水の形を見ながら、音を聞きます。空が近いから、雨が近いのです。雲の動いていく先を予想し、そのうち、雲の切れ間から光がもれる様をみて、何ともいえない気持ちになったりします。

 

 

屋根うら部屋には、ベランダもあります。

ビルの谷間の空は狭くて高い。フレーミングされた空は、日替わりの作品のようで、あきることはありません。私たちは、積み重なった時間に、一日を、また積み重ねていきます。

どうぞ、気が向いたらテトラグラフにお立ち寄りください。珈琲をお入れいたします。ご一緒に、冷泉荘のお話しを、できたらいいですね。